現代社会の呪い

仕事不足の問題

いま日本の若者は就職難で、就職率がとても低い状態です。 また、就職できた人も低賃金であることが多く、そればかりか 長時間重労働というブラック企業が満ち溢れています。
ブラック企業に務めている人は、我慢して働き続けます。 やめると次の仕事が見つかる保証が無いからです。
学生やリストラリーマンはブラック企業にさえ飛びつきます。 それくらい求人が少ないからです。
まるで仕事の奪い合いです。誰もが(やりたくもない) 仕事など支度はないものですが、生活の糧を得るために競争してまで奪い合います。

どうして仕事を奪い合う状況になってしまったかというと、仕事が少ないからです。 なぜ仕事が少ないかというと、仕事が必要ないからです。 仕事が必要ないとは、つまり生活に必要な物も娯楽もある程度供給されているので これ以上必要ないということです。効率化や機械科学の進化、仕事の分業化により マンパワーが不必要になった結果でしょう。


これを解決する手段はあります。 お金を持っている人からお金を取り上げるか(累進課税)、 労働を規制する(週休4日)にすることです。
累進課税策を撮れば、金持ちはただ税金として持っていかれるのはいやですから、 別に欲しくもないものを買ったり、仕事をやめてしまったりするでしょう。 そうすれば物の消費が激しくなり仕事も増える(大量生産大量消費)という塩梅です。
週休4日策をとれば、消費は増えませんがマンパワー不足に成り、就職が楽になるでしょう。 企業はマンパワー不足での生産力不足を補うために、さらなる機械化を進めるでしょう。

解決手段はあるのです。しかしあくまで一国内で全てが完結する場合の話です。 グローバル化した現在ではこの手が一切通用しなくなっています。

お金の問題

世界各国がお金の問題で頭を悩ませています。 政府の借金がふくれあがっていたり、政府だけでなく国民各自が多額の借金を抱えていたりします。
しかし政府も国民も借金をしているとすると、政府と国民は誰に金を借りているのでしょう?  そう、お金持ちです。お金持ちの貯金を銀行を通して国(国債)や個人(融資)が借りています。 お金持ちは利子を受け取り続け、国や個人は利子を払い続けますから、国や個人の借金と苦しみは 亡くならないばかりか増えていくわけです。

これも解決策があります。 お金を刷って借金をチャラにしてしまう方法(金融緩和)か、 お金持ちからお金を取り上げて借金の穴埋めを剃る方法(累進課税)です。 金融緩和をすると通貨の価値が薄まりますから物価が上がりますが、 労働者にとっては借金がなくなり給料が増えるのですからメリットのほうが大きく、金持ちばかりが損をします。 これらも一国内ならば上手く行きます。 しかしグローバル化した現代では通用しません。

問題をややこしくするグローバル化

なぜグローバル化すると、それぞれの対策が成り立たないのか説明します。
累進課税は金持ちにとって不利な政策です。 だから金持ちは海外に逃げてしまいます。政府は取りっぱぐれです。
週休4日については、これを実施するとマンパワーが貴重になり人件費が上がり 生産力が落ちます。そうすると企業は海外との競争に勝てませんから外国に出て行き、仕事が全くなくなってしまいます。
金融緩和も金持ちには不利な政策です。溜め込んだお金の価値が薄まっていくのだからたまったものでは ありません。お金持ちは海外に資産を移します。それだけならいいのですが、 お金持ちのほとんどは大企業の幹部であったり経営者であり、企業自体がお金持ちだったりしますので、 彼らが出て行くと仕事もなくなるのではないかとも言われています。 (金持ち企業が出て行って仕事がなくなっても、貧乏人達の中から会社を立ち上げるひとが居るから大丈夫だ と言う論もありますが、大手企業は特許や技術力や生産基盤を持っていますから、 海外に移った彼らと、一から作り上げた貧乏人会社がやりあうには分が悪いのではないでしょうか)

これらを強引に抑えることはできます。 すなわち『海外に資産を移しては行けない』『海外に資産を移す場合、8割税金で持っていく』 と法律で決めればいいのです。しかし実際にはできません。その理由は後で説明します。

悪魔のグローバル化

グローバル化の恐ろしさは、金持ちにとって有利な政策にしておかないと海外に逃げてしまうだけではありません。 グローバル化によって不況の押し付け合い、政府の借金の押し付け合い、個人の借金の押し付け合い、 貿易赤字の押し付け合いが行われています。行われざるをえない情況なのです。

不況になると税収が落ちて政府の借金が増え、給料も減って個人の借金も増えます。
各国は政府と個人の借金を穴埋めしなくてはなりません。本来なら金持ちのお金で穴埋め すればいいのですが前述の理由でできませんので外国のお金で(=外国の借金で)埋めようとします。
具体的に云うと、貿易で儲けようとします。
貿易で設けるためには、他国を出しぬいてよりよい商品を安く作らねばなりません。 そのためには自国の労働者をより安くより長時間働かせねばなりません。そうやって各国とも 自国労働者をいじめぬくことに苦心しています。徹底的に自国民をいじめぬいた国が輸出のチャンピョンになれます(韓国)。
金融緩和すればいいじゃないか、という意見もありますが、自国通貨安になると原料輸入代が高くつくので上手くいきません。 色々な資源や原料があるくにも、結局は資源国同士の安売り合戦に巻き込まれていきます。 より安く売るためには、いかに環境問題を無視するか、資源貯蔵量を無視するか、そして 労働者をイジメ抜くかにかかっています。国土と労働者を破壊しぬいた国が資源輸出国のチャンピョンです(中国)。

結局、資源輸出国のチャンピョンと輸出国のチャンピョンが、地球環境を破壊しつつ不況を撒き散らします。 そこまでして得をするのは(自分は働かなくて良い)お金持ち・企業ぐらいのものです。
しかし彼らとて結局損をします。お金を巻き上げる相手である労働者や政府が貧乏の素寒貧になっていくのですから どうしようもありません。

恐ろしいのは、環境も経済も破壊するロジックがシステムとして存在し、グローバル化によって地球の隅々 まで行き渡っていることです。
せめてそれぞれの国でセパレートできれば、 お金持ちや政府だって貧乏人を職滅しては成り立ちませんから限度というものができ、ある程度の所で安定するでしょう。 限度を守れないお金持ちがのさばる国は滅ぶだけです。それを見て回り国は学ぶでしょう。
しかし各国でこのシステムをセパレートすることはできません。なぜなら、資源や商品や食料を買ったり売ったりしてお互い成り立っているからです。 自国だけでは自立できない情況に追い込まれています。もちろん、一時の不便や、場合によっては永久的な 生活水準の下落を覚悟すれば自立には問題ないでしょう。
でもダメです。セパレートできません。戦争があるからです。 陸地のみ成らず海域の奪い合い、エネルギーの奪い合いがあるからです。 戦いに備えるためには良い兵器が必要です。 良い兵器を作るなら、どうしても最新鋭の技術が必要になり、海外と取引せねばなりません。
仮に外交がうまくいっていて軍事力が少なくて済む国であっても、貿易で金を掠め取りたい 国が軍事力をバックに交渉をしてきます。どうあっても無理やりグローバル化に取り込まれてしまうのです。 すべての人を不幸にするグローバル化。まるで怪物のようです。

呪いの世界

各個人も各国も、とにかく相手に不幸と不遇を押し付けあっています。 国際関係で言えば軍事力をバックにした脅し合い、歴史問題を盾にして金せびり。 政府と国民の間でも増税と公務員叩き。個人同士となると会社での足の引っ張り合い、無意味な 労働競争をして参加しない奴をのけものにする。会社以外でもネットや雑誌を見ては罵倒や妬み にあふれています。
まさに呪い合いです。 恐ろしいことにこの呪いは、搾取の効率を上げることよりも 呪いを増幅することを主眼としています。(一例としてコチラのコラムを参照

そういうシステムの中、非労働者だけが得をしています。 生活保護者、年金生活者、そして実労働をしなくなったお金持ちや企業人です。 『働いて稼いで生活をする』というサイクルから外れた彼らからすれば、 グローバル競争のなかで、どれだけ労働環境が悪くなろうが、あるいは就職出来ない人が増えようが 直接には影響ないのです。 お金持ちからしたら、年金生活者や生活保護者なども働かせて搾り取りたい所ですが、 それをしないのは批難のはけ口が自分たちお金持ちに向かないようにするための盾といったところでしょう。

このようにお金持ちの下、世界中で人は呪い合い不幸を製造し地球環境を破壊しているわけです。

しかし労働者を締め付けると暴動や揉め事ばかりが起きてしまい効率的な搾取ができません。 そのために発明されたのが宗教です。『盗んではいけません、殺してはいけません、 恨み妬みはいけません』というように労働者管理に非常に都合が良い教えです。
宗教や学校では「物を盗んではいけない」と教え、また「労働は義務だ」とも教えます。 つまり「お金持ちの物を盗んではいけない」けれど、お金持ちたちが 「労働力を盗む」ことは合法だ。「労働は義務」なので貧乏人諸君は 疑問を持たず働け、という案配です。

呪いを打ち砕くもの

呪いの連鎖を打ち砕くには「 人を恨むのは辞めましょう。憎むのは辞めましょう」という合理的宗教ではだめです。 また、金持ちを全て処分したとしても、残った中から金持ちが出来てしまうから意味がありません。 お金が回る完璧な社会制度が世界的にできれば呪いは薄まるかもしれませんが環境問題は解決しないでしょう。

これらを解決できるのは非合理的であることです。正確に言えば競争に対して非合理的であること。 逆に言えば競争しなければ良いのです。
これは少し考えてみればわかるはずです。 お金持ちだって貧乏人だって、週三日だけ働いて後はそこそこの趣味と自由を満喫出来れば 本来は十分なはずです。 ところが現代は「俺はアイツより…仕事が出来る,いい暮らしをしている,収入が高い, 金持ちだ,モテる,人生得をしている」等々、何かにつけて他人と競争し、いちいち勝てる相手(見下せる相手) を見つけて己を誇ることに苦心しています。 これが呪いの連鎖の元、ロジックそのものだと思います。
散々お金持ちを避難しましたが、彼らだって労働者が死に絶えたり地球がおかしくなってしまえば、 自分の生活を自慢することも満喫することもできなくなってしまうのですから、普通なら「ほどほどにしておこう」と 思うはずです。しかし程々にしてしまったら他の金持ちに差が付けられてしまいます。 あるいは兎に角労働者を疲弊させるのが好きな悪魔的人間もいることでしょう。
仮に良心的なお金持ちがいて程々の労働で済む会社を作っても、悪魔的経営者の運営する同業者に 顧客を取られてしまうでしょう。
そんな訳でこのシステムは止まらないのです。

呪いの連鎖にはまらない人は昔から存在したでしょう。 しかしそれらは少数であり、僧侶などの特殊な暮らしをしている人が多かったのではないかと思います。 また経済が発展したからといって呪う人が少なくなったわけではなく、日本ではむしろ 経済成長に沿うような形で上記のような競争が増長してきたように思います。
しかし現代日本で、貧乏人にもかかわらず呪いの連鎖から外れている人たちが沢山でてきました。 それも一種の社会現象とも言われているほどの数です。
彼らは贅沢を望みません。必要以上の給料も望みません。無理に女を追いかけることもしません。 高いクルマも乗りたがりません。かと言って無気力なわけではなく、お金がかからない趣味を持っています。 そしてできれば楽で休みの多い仕事について、趣味に時間を費やしノンビリと過ごしたいと思っています。
彼らはまさしく『週休4日政策』を望む者達です。他人と競争 するより、自己満足に生きる者達です。 彼らは「草食系男子」などと呼ばれていますが、私は「進歩的日本人」と呼びたいと思います。
進歩的日本人的な生活や思想をみて、世界が「競争しなくても楽しく行きられるんだ」と、 お金持ちも「搾取しなくても満足できるんだ」と理解すれば環境問題も不況も解決するでしょう。 競争したい人は他人を巻き込まず、ゲームのように競争したい人たちだけで競争すればいいのです。 そのような世界を構築するには、物理的な事でもシステム的なことでも無理でしょう。 多くの国民、政府関係者、お金持ち達に思想が伝播し浸透しなければなりません。 今後おそらく、日本の変わった若者たち(進歩的日本人)が世界のメディアで取り上げられる機会が増えるでしょう。 そして進歩的日本人たちが案外幸せで社会的に成り立っていることを知れば、 世界中の国民も自然と変わるはずです。
多くの人は、本当は競争より自己満足のほうが好きなのだから。



TOP    著作:ハゲおっさん 2013/01/21
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